私は50歳の頃、パーキンソン病という病気に冒されました。
そんな私の夢は、病気の進行を遅らせ、豊かに生きることです。
これは、同じ病を持つ方々の経験談や情報のシェアにより、勇気づけられ、仲間の大切さを実感したエピソードです。
パーキンソン病とは?
パーキンソン病というのは脳の黒質という部分の異常によってドーパミンという物質の分泌が極端に減少する病気です。
ドーパミンは運動神経を司る物質なので、ドーパミンの分泌が減少すると身体の動きが鈍く緩慢になり、手足が震えたり、歩行やバランスに障害が出たりして、最終的には歩行困難や寝たきり状態になってしまう病気です。
私は現在、薬物治療を受けていますが、パーキンソン病は国の難病指定を受けている病気で、現代医学では治療法が確立していない病気のため、薬物治療といっても、病気を治したり、進行を止められる訳ではなく、病気によって出るさまざまな症状を緩和するだけです。
また、この病気の進行の速さは人によって異なり、徐々ではありますが確実に進行する恐ろしい病気です。
宣告を受けての目標設定
パーキンソン病の宣告を受けた時は、なぜ私だけがこんな不幸な目にあうのか?と自分の不運を恨み、絶望しかけましたが、自分には大切な親や家族がいることを思い出し、
”家族に迷惑をかけることはできない。
しかし、病気の進行は止められないにしても、進行を遅らせることはできる。
現在、IPS細胞研究で有名なノーベル賞受賞学者である山中伸弥氏がIPS細胞を活用した治療法を開発しているので、それまで病気の進行を遅らせる努力をしよう!”
と誓いました。
病気の進行を遅らせることが自分ができる最大限の抵抗だと認識し、今後の人生の大きな目標としたのです。
成果の出ている人に倣うことで頑張れる
誓いを立てたとは言っても、一人目標に向かって活動していくのは何とも心細いものです。
そこで同じような目標を持って活動しているパーキンソン病患者の方とコンタクトが取れないか考えました。
すぐにインターネットなどで情報を入手し、患者が集まるコミュニティなどに参加するようにしました。
ここで色々な人から話を聞くことで、本当に勇気づけられました。
病気の性格から患者さんには高齢の方が多く、病気の発症を避けられない不運として甘受している方が多いのですが、若くして病気を発症した方は、病気を運命を思う一方で、私と同様、僅かながらの抵抗を試みようとしている方もいました。
そんな人たちと交流を深めていくことで、自分自身の目標に対する意気込みがだんだん増幅されていきました。
例えば、私より10歳も年下ながら若くして発症した男性は、5段階の重症度分類の4段階目に該当していました。
これは日常生活のさまざまな場面で他人の介助を必要とする重症度レベルです。
私はというと現在、日常生活に支障が出ることもありますが、基本的には他人による介助無しで生活できるレベル3段階目に該当していたので、年下の彼の方が重症でした。
それにも関わらず、その男性は日々リハビリに専念していました。
リハビリには運動療法、作業療法、言語療法などがありますが、彼は独学でこれらを調べ、また医師にも相談して自分にとって最適なリハビリテーションを確立し実行していました。
その成果は驚くほどで、リハビリ開始時期から症状はほとんど進行せず、現状を維持しているそうです。
彼から参考になる話を聞いて、私も同じ夢を達成するために、自らのリハビリ計画を立て、経過を主治医に報告しました。
その中で、適宜実施内容を軌道修正しながら、現在、病気の進行をできるだけ抑えています。
同じように頑張っている、それも自分より年下の人間が頑張っているからこそ私も努力できているのだと思います。
コミュニティからの情報
また私が受けている治療法の薬物療法は、現在5種類の薬を飲むことで行なわれていますが、この薬代が、過去に払ってきたいずれの薬代よりも高価で、家計にも大きな負担となっていました。
しかしコミュニティに参加することで、難病の医療費に対する負担軽減措置があると知ることができました。
病気の度合いや収入などによって、医療費が一部免除される制度です。
これは願ってもない情報で、さっそく適用申請を行い、問題なく認定されて、医療費も大幅に軽減されました。
こうした情報交換によって有益な情報入手ができたことも同じ仲間がいたからこそです。
夢を叶えるために仲間は居た方がいい
夢とはたいていの場合、叶えることが難しいものですが、それでも夢を追うことは人生を豊かにし、新しい生きがいが得られ、日常生活を前向きにするものです。
私の目標とする対象はネガティブなもので、またその成果も決して可能性が高いものではありませんが、残りの人生を悔いなく生きるためには必須の目標であり、今後も仲間と励ましあってくじけることなく続けていきたいと思います。