私の祖父は代々続く農家を営んでいました。
父の代からはサラリーマンになり、農家という家業が途絶えました。
しかし庭には小さい畑もあり、祖父は引退後も細々と野菜を育てていました。
同居していた孫の私は祖父母にとてもなついていて、畑で作業する祖父と一緒に遊んでもらったり楽しい思い出がいっぱいです。
そんな私も高校二年生になり、そろそろ進路を決めるべき時期を迎えました。
美大への道
昔から美術に興味のあった私の目標は、まず美大に行くことに定まりました。
しかし早速ここで挫折しました。
美大入試専門の予備校に通ってすぐに自分の実力のなさを痛感したのです。
クラスではまあまあ絵の上手い子として認められていても、専門の場所に行ってしまうと強者揃いの現実を目の当たりにする、という、よく聞く話のそれと同じです。
その予備校では、高校2年生、3年生のクラスでまとめて絵の品評会をします。
50人ほどの小さい予備校でしたが、上手な作品から順に、それは残酷に順位付けをされ、貼られていきます。
私にとって初めての品評会で、私の作品は下から二番目の所にありました。
「だめだな」
諦めの早い私は美大への目標を諦めました。
あんなに好きだった絵も、こうなってくるともう苦痛でしかない。
なにより石膏デッサンの辛いこと辛いこと。
今までボールペンや鉛筆等でしか絵を描いたことがない私が木炭で絵を描く??
びっくりです。
色々な衝撃が重なって、ある程度通ったところで美大専門の予備校を退校しました。
美大を甘く見ていたことで、早々に挫折してしまいました。
進路変更
そこから高3の春まで進路がはっきり決められない日々を過ごしていました。
もう決めないといけないぎりぎりの夏前に思いきって農学部への進路へ方向転換しました。
祖父との、畑での思い出です。
美術とは全く違いますが、自分の興味のある分野には違いありません。
ちょうど高校の指定校推薦もありました。
一応内申点も頑張って上げていた私は、推薦で秋には農学部への入学が決まりました。
心のどこかでは美大への未練がありましたが、そうは言っても実力がない。
割り切っていくことにしました。
翌年の春には、大学生活がスタートし、とても素敵な友人にも恵まれました。
育ってきた環境に近い農業の学びもすんなり入ってきます。
結果、ここに来て良かったと心から思えました。
仕事にすることだけが目標達成ではない
その後は結局一般企業の事務職として働きはじめました。
現在私は、その仕事のすきま時間に、農業で得た知識と、絵の経験をミックスして、四コマ漫画風のイラストを描いています。
仕事になっているわけではないのですが、SNSに投稿したりして「イイネ」を貰えることが何よりの生き甲斐になっています。
美大への道を絶たれ挫折を味わったその時は相当落ち込みましたが、いまこうして社会人として働きながら、勉強してきた農業とイラストを組み合わせて楽しい活動が出来ています。
こういう目標の達成の仕方もあるのですね。
今の若い人には是非、視野を広く持っていただき、その時がすべてじゃないとお伝えしたいです。